日本の「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)」は、ゴミ屋敷問題に対する自治体の介入に重要な法的根拠を提供しますが、この法律だけでは、ゴミ屋敷問題の全てを解決できるわけではありません。廃棄物処理法は主に「ゴミそのもの」の処理に関する規定であり、ゴミ屋敷の背景に潜む複雑な「人間の問題」への直接的な介入には限界があります。廃棄物処理法の限界の一つは、「居住者の精神的な問題やセルフネグレクトへの非対応」です。多くのゴミ屋敷の住人は、うつ病、認知症、強迫性障害(溜め込み症)、発達障害などの精神疾患や、自己管理能力の低下を伴うセルフネグレクトに陥っています。彼らは、片付けたいという気持ちがありながらも、病状のためにそれができないという葛藤を抱えており、単に「ゴミを片付けなさい」と命令するだけでは、根本的な解決には繋がりません。廃棄物処理法は、このような住人の心理状態や福祉的なニーズに応える規定を持っていません。次に、「社会的な孤立や経済的困窮への非対応」も限界点です。ゴミ屋敷の背景には、家族や地域社会からの孤立、あるいはゴミの処分費用や片付け費用を捻出できないほどの経済的困窮が関係していることも少なくありません。廃棄物処理法は、このような社会経済的な問題への支援を直接的に規定するものではなく、住人が孤立したまま、あるいは経済的な困難を抱えたままでは、ゴミ屋敷の再発リスクが常に付きまといます。また、「プライバシーの尊重と強制介入の難しさ」も廃棄物処理法だけでは解決しがたい問題です。個人の住居はプライバシーが保護されるべき空間であり、自治体は住人の同意なく立ち入ることはできません。廃棄物処理法に基づく指導や命令であっても、住人が頑なに拒否したり、心を閉ざしたりする場合には、強制執行という最終手段に至るまでに長い時間と労力を要します。その際も、住人の人権に配慮した対応が求められるため、単なる「ゴミの撤去」という行為に留まらない複雑な調整が必要となります。さらに、「再発防止への限界」も指摘されます。廃棄物処理法に基づくゴミの撤去は、物理的な問題の一時的な解決にはなりますが、住人の生活習慣や心の状態が改善されなければ、再びゴミが溜まり始めリバウンドのリスクが高いです。この法律は片付け後の継続的な見守りや、住人の生活再建に向けた長期的な支援を直接的に規定するものではありません。
廃棄物処理法だけでは不十分?ゴミ屋敷問題の限界